8. インドを行く
今回の一人旅はインド。夕方、インディラ・ガーンディー空港に到着。
空港のなかは、予想よりも近代的だった。しかし、そんな空港内でも、
全く迷いのないインド人の勇姿がそこにあった。その壮大なスケールは、
雄大なるガンジス川の流れそのもの。全ての罪は川へと帰り、清められていく。
そんな大通りを歩いて行くと、洋服屋があった。とりあえず近づいてみると、
洗濯中か新品かわからないパンツが、ただ優しく、風にゆれていた。
そんなパンツの風味と共に訪れる夕暮れ。こうして、インドの1日は終わっていく。
現れたのは、あのタージマハール。流れるようなフォルム、黒柳徹子を感じさせるシルエット、すべてが絶妙のバランスで設計されている。
ところでここは宮殿でなく、とある姫の「お墓」だという。とりあえず並んでいると、
誰かが横入りしたとかで、一気に列が乱れ、全員が入り口に殺到し始めた。
みるみる混沌をきわめる、山手線・新宿方面行き。しかも場内は、
最前列が空いたので、旦那を大声で呼ぶ婦人の姿が。「あなた、早くここへ!」
しかし、全然関係ないおっさんがカットイン。すごいスピードのムーンウォークで、安住の地を確保していた。
そんなインド人を見つめ続けてきた、偉大なるガンジス。すでに何の説得力もない。
神に祈りを捧げる、修行僧の姿が。予想以上に張りつめた空気に、緊張が高まる。でも先輩の修行僧は、
スマートフォンで未来派。修行よりも、電波の入り具合を気にしていた。
そんな弟子たちを見守る、マトンカレー師匠。マトンカレーの煮込み具合も含め、悩みはつきない。
ところで、ガンジス川のほとりでは、ホースで水がくみ上げられていた。
なぜかそのまま川に戻すという、衝撃のプラマイゼロが展開されていた。
そんなプラマイゼロを、チームで見守る「チーム・プラマイゼロ」。ヒマを超えた者だけが到達できる、約束の地がここにある。
しばらくすると、お昼になったので町のレストランへ。とりあえず店員を探すと、
気取らない、自然体のスタイルで出迎えてくれた。一応しばらく待ってみると、
仕方なく、屋台で食べ物を買う。アジアの屋台は衛生上の問題があるという人もいるが、そんなことはない。地元の料理を食べて初めて、その国が見えてくる。
5秒後、衛生上の問題によりスムーズに薬局へ。みるみる体調が悪化するなか、適当な宿へ駆け込み、休むことに。
しかし、どんな建設会社に依頼すると、こんな悲しい空間が出来上がるのだろう。ふと見上げると、
鉄格子と裸電球が夢の共演。明日のスケジュールは死刑ということを、力のかぎり伝えてくれる。
お手洗いを使い去っていく、新感覚のアトラクションも搭載。さらに、
2ミリだけこっちを見てくる、プライベート崩壊ワールドも広がっていた。こうしてまったく眠れぬまま、時間だけが過ぎていった。
翌日、何とか体調が戻ったところで、再び町へ。すると大通りの露店では、
たこの糸は、長さによって値段が変わるため、店員の表情も真剣そのものだ。誰かが少しでも話しかけると、
「うるせーよ」と、即ギレで対応。こうしてインドの下町では、今日も不毛な争いが量産されていく。
その一方で、屋上でたこを飛ばす子供たちの動きは、かわいいというよりも、
過激な演説で大衆をあおる独裁者にしか見えず、不気味なムードを放っていた。
そんな町中では、牛が当然のように歩いていた。もちろん、ただ歩くのでなく、
玄関あけたら2秒でビーフ。この国ではこんなキラーパスが、ほぼ秒単位で繰り返されている。
逆にウォーリーは探しやすかった。少し記憶と異なるものの、ウォーリーは探しやすかった。
なぜか、シャンプーハットを持った老人が現れ始めた。しばらく見ていると、
ターバンマニアのターキチたちの心をつかむ、防水キャップを提供していることがわかった。
もちろん熟年のターキチも、急いでシャンプーハットを買いに来るものの、
全力で素足だったりするため、どんだけ急いで買いに来たのか知りたい俺がいた。
しかし真上では、頼りない爺さんが、テトリス感覚でブロックを積み重ねていた。
わざわざ集まる、ゆかいな仲間たち。しかしこのわざわざ感が、インドなのかもしれない。
最終日は快晴だった。この旅を振り返るため、誰もいない場所を求め、
静かな公園へ。音も、風もない空間。少しづつ、疲れがとれていくのを感じた。
でも食い込んでくるインド人。空前の低空飛行で人生をサボる、その攻撃的な姿勢に学ぶものは多い。
そして、帰りの空港へ。もちろん、まだ気は抜けない。「お母さんにただいまと言うまでがインド」という緊張感のなか、カレー風味の渋滞を抜けていく。
インド。そこは、全てが思いつくままに存在する直感型のディープ大国だった。これからも、誰にも気を使わず、ただひたすらそのままのインドであり続けて欲しいと思う。